17歳のアンパイア-2
裏方にも各自が得意とする領域があり、自然とそれぞれの役割が決まっていた。
背番号15の彼はライン引きが上手い。
まず、ホームと一塁の間に紐を張る。
「もうちょい右、もうあと3センチ、はいそこ。」
と的確に指示を出す。次にピンと張られた紐をガイドにして白線を弾く。石灰の入ったラインカーをコロコロと押し進める。彼の引くラインは真っすぐで美しかった。
バッターボックスを描くときは、木製の型枠を使う。高校生でありながら、職人的な仕事ぶりだった。
彼はその後、福井工業大学を経て国土交通省の職員として働く。よく出来た話のようだが、本当の事。
大学時代に彼の下宿を訪れた事がある。夕食に食べさせてもらったソースカツ丼が、とてつもなく上手かった。大学近くの小さな食堂の人気メニューで、福井の名物との事。丼飯に敷き詰めたキャベツの千切り、その上に乗った大きなトンカツ。黒っぽいソースは市販のとんかつソースと一味違っていた。ちなみに、だし卵でとじた一般的なカツ丼は、「たまごカツ丼」と呼び分けているそうだ。
つづく