17歳のアンパイア-3
公式戦の審判はすべて高野連(高校野球連盟の略 高野豆腐の連盟ではない)の審判員が務める。しかし、練習試合では主審だけ高野連から来て、後の塁審は控えの野球部員が立つケースが多かった。(連盟から来れなければ主審も部員がする。)
裏方の仕事の中で、これは結構面白かった。
「スットライーク!!」
大きな声とジェスチャーでジャッジする。爽快な気分だ。
もちろん難しさもあるが、それだけにやりがいもあった。主審の場合はストライク、ボールの判定もする。マスクを付けて、それもキャチャーの背中越しに見るので中々分かりづらい。特に変化球の判定は難しかった。ほとんど感覚と雰囲気で取っていたというのが実感。野球中継のテレビ画面で見るほうが、よほど分かりやすい。
つづく
17歳のアンパイア-2
裏方にも各自が得意とする領域があり、自然とそれぞれの役割が決まっていた。
背番号15の彼はライン引きが上手い。
まず、ホームと一塁の間に紐を張る。
「もうちょい右、もうあと3センチ、はいそこ。」
と的確に指示を出す。次にピンと張られた紐をガイドにして白線を弾く。石灰の入ったラインカーをコロコロと押し進める。彼の引くラインは真っすぐで美しかった。
バッターボックスを描くときは、木製の型枠を使う。高校生でありながら、職人的な仕事ぶりだった。
彼はその後、福井工業大学を経て国土交通省の職員として働く。よく出来た話のようだが、本当の事。
大学時代に彼の下宿を訪れた事がある。夕食に食べさせてもらったソースカツ丼が、とてつもなく上手かった。大学近くの小さな食堂の人気メニューで、福井の名物との事。丼飯に敷き詰めたキャベツの千切り、その上に乗った大きなトンカツ。黒っぽいソースは市販のとんかつソースと一味違っていた。ちなみに、だし卵でとじた一般的なカツ丼は、「たまごカツ丼」と呼び分けているそうだ。
つづく
17歳のアンパイア-1
高校時代の話をもう一つ。
野球の試合は9人で行われる。試合に出れない他の人は何をしているのか。
補欠には補欠の仕事がある。
いわゆる裏方的な役目が結構あり、練習試合ではライン引きや審判も補欠組が務める。それ以外にも、外野ノックやバット引きなど。スコアブックは基本マネージャやーさんの仕事だが、控え選手がすることもある。
つづく