昭和

17歳のアンパイア-3

公式戦の審判はすべて高野連(高校野球連盟の略 高野豆腐の連盟ではない)の審判員が務める。しかし、練習試合では主審だけ高野連から来て、後の塁審は控えの野球部員が立つケースが多かった。(連盟から来れなければ主審も部員がする。) 裏方の仕事の中で…

17歳のアンパイア-2

裏方にも各自が得意とする領域があり、自然とそれぞれの役割が決まっていた。 背番号15の彼はライン引きが上手い。 まず、ホームと一塁の間に紐を張る。 「もうちょい右、もうあと3センチ、はいそこ。」 と的確に指示を出す。次にピンと張られた紐をガイ…

17歳のアンパイア-1

高校時代の話をもう一つ。 野球の試合は9人で行われる。試合に出れない他の人は何をしているのか。 補欠には補欠の仕事がある。 いわゆる裏方的な役目が結構あり、練習試合ではライン引きや審判も補欠組が務める。それ以外にも、外野ノックやバット引きなど…

ニケ先生の思い出-6

大学のキャンパスを飾った桜は散り、寮の生活にも少し慣れ始めてきた頃、先生からの葉書が届いた。 なつかしい、癖のある独特な文字が並んでいる。 「ニケタンマね、」と言い、勢い良く黒板にチョークを走らせる先生の姿が浮かぶ。 それと同じ字だった。 ー…

ニケ先生の思い出-5

僕の通っていた高校の運動会は一大イベントだった。 その日も、朝から市の陸上競技場を借り切って盛大に行われていた。 その時、僕はスタンドの上の方に座って競技を見ていた。ふと後ろを振り返り、競技場の外に目をやると、アスファルトの外周を先生が歩い…

ニケ先生の思い出-4

「給料もらったら一万円を取っておいて、それを本を買うために使いなさい」 一万円という額は決して小さくはない。ましてや高校生にしてみれば、かなり大きなお金という印象があった。 社会人になってから、実際にこの教えを実行できたことは恐らく無かった…

ニケ先生の思い出-3

先生は大変な読書家で、事あるごとに本を読む事の大切さを教えて下さいました。 授業を始める前に、「読んで欲しい」本とその著者を黒板に書き、 「この本はねぇ、」 と、その本についての感想などを聞かせて下さいました。 高校生に向けてという事か、北杜…

ニケ先生の思い出-3

「ニケタンマね、ニケタンマ。」 板書を途中で止めて、チョークを持った手をこめかみにを置き、じっと何かを考えていた。 前の方で生徒達の笑い声が聞こえる。 「あ、面白い?これね、先生の故郷(くに)の言葉でね、ちょっと待ってっていうのを、ニケタンマ…

ニケ先生の思い出-2

途中、滋賀県の米原駅で乗り換える。関ケ原、大垣と過ぎて、たどり着いたのは穂積という岐阜県の小さな駅。 これから始まる、新しい生活への期待と不安の入り混じった気持ちを胸に、この駅に降り立った。 大学寮とは言っても、それぞれが自由に生活をしてい…

ニケ先生の思い出-1

国鉄、という呼び方に懐かしさ感を感じる。 それが民営化された当時は、逆にジェイアールの方に違和感があった。 「ケッタイな名前つけよったな。」 新名称の発表を聞いて、父が言った言葉だ。多くの日本人、特に父のように昭和を長く生きた世代の方々は同じ…

花嫁の衣-7

当時はまだ、日本ユナイト・ペンテコステ教団に属していました。 聖会の講師はアメリカから来られたUPCのトレーシー先生でした。使徒行伝から熱くメッセージを語られました。 その聖会で、イエスを信じるものは聖霊を受け異言で祈ることができると聞きました…

花嫁の衣-6

そこは、日本ユナイトペンテコステという教団に属する教会でした。いわゆるペンテコステ派です。 カトリックとプロテスタントは違う、くらいの事は知っていましたが、プロテスタントの中にもいくつか教派があるという事は知りませんでした。名前が似ているの…

花嫁の衣-5

18歳の春に岐阜県での生活が始まりました。 どこの教会に行こうか、と思っていた時にある看板が目に留まりました。 「岐阜キリスト福音教会」 私が子供の頃から通っていた 「尼崎福音教会」 と名前が似ているので、ここに行ってみようという事にしました。 …

花嫁の衣-4

イエス・キリストにだけ心を捧げたい、そう思ってもつい肉の思いにとらわれてしまいがちです。そこで主は助け主である聖霊を送って下さいました。 教会が生まれてから今日に至るまで、キリストの花嫁として整える為に聖霊は絶えず働いておられます。ちょうど…

花嫁の衣-3

「イエス・キリストを着なさい」 教会は今、その美しい衣に覆われるときです。なぜなら婚礼の時が近づいたからです。 夜はふけて、昼が近づきました。ですから、私たちは、やみのわざを打ち捨てて、光の武具を着けようではありませんか。」ローマ13:12 …

花嫁の衣ー2

そして、ここからは夢の話。 いよいよ初打席に立つ時が来た。バットを持ち準備をする。その時、唖然としました。 なんとユニフォームを着ていないではありませんか。 これはヤバいことになったぞ。パンツ一丁では打席に立てない。 これまでしてきた練習が無…

花嫁の衣 - 1

あなたがはた、今がどのような時か知っているのですから、このように行いなさい。 あなたがたが眠りからさめるべき時刻がもう来ています。 というのは、私たちが信じたころよりも、今は救いが私たちにもっと近づいているからです。 夜はふけて、昼が近づきま…

おにぎりエース (1)

自宅から最寄りのコンビニまで徒歩5分。 県道沿いにあるローソンがそれだ。道を挟んで隣にはセブンイレブンもある。 そこから西に数百メートルのところにもセブンがあった。 が、そこは近頃閉店した。 現在その跡地は、納骨堂を抱える寺の駐車場となってい…

音のないピアノ (4)

演奏が終わり、ピアノの椅子に腰掛けたままインタビューを受けている。 その最中の出来事だった。 突然、若い黒人男性が走り寄って来る。 左手で自分の胸を押さえ、右手のひらを老人に差し出し 「あなたの演奏にとても感動しました。本当にありがとう。」 そ…

音のないピアノ (3)

手の動きからして、ゆっくりした曲のようだ。画面の右下に曲名と作曲者が表示されるが、見覚えがない。彼は演奏の後のインタビューで次のようなことを話していた。 「ピアノを弾いて聴いてくれる人がいる。そうすると自分の価値が認められたように感じて嬉し…

音のないピアノ (2)

そこは、ロンドン駅の構内。 世界有数の大都市だけあって多くの人々が行き交う。広い通路の両側には色とりどりの店舗が立ち並ぶ。駅というよりは国際空港のような開放感と華やかさ。しかし、やはりロンドンだ。森にかかる朝霧のような深みが漂う。それらは入…

音のないピアノ (1)

かっこいいじいさんを見た。 「観た」と書くべきか。 仕事の合間に立ち寄った家電量販店。駐車場に車を止め、階段を上ると学校の体育館ほどある大きなフロアー。奥の方に大小様々のテレビが陳列されている。 いくつかの番組が映し出されるなかで、野球中継に…

レコード (2)

後期ベストアルバムが青盤と呼ばれるのは、ジャケットのデザインが青を基調としているから。 4人がビルのバルコニーに笑顔で立っている。デビューアルバム「Please please me」のジャケ写と場所も構図も全く同じなので、彼らの変容が見て取れる。中でも一番…