2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ニケ先生の思い出-6

大学のキャンパスを飾った桜は散り、寮の生活にも少し慣れ始めてきた頃、先生からの葉書が届いた。 なつかしい、癖のある独特な文字が並んでいる。 「ニケタンマね、」と言い、勢い良く黒板にチョークを走らせる先生の姿が浮かぶ。 それと同じ字だった。 ー…

ニケ先生の思い出-5

僕の通っていた高校の運動会は一大イベントだった。 その日も、朝から市の陸上競技場を借り切って盛大に行われていた。 その時、僕はスタンドの上の方に座って競技を見ていた。ふと後ろを振り返り、競技場の外に目をやると、アスファルトの外周を先生が歩い…

ニケ先生の思い出-4

「給料もらったら一万円を取っておいて、それを本を買うために使いなさい」 一万円という額は決して小さくはない。ましてや高校生にしてみれば、かなり大きなお金という印象があった。 社会人になってから、実際にこの教えを実行できたことは恐らく無かった…

ニケ先生の思い出-3

先生は大変な読書家で、事あるごとに本を読む事の大切さを教えて下さいました。 授業を始める前に、「読んで欲しい」本とその著者を黒板に書き、 「この本はねぇ、」 と、その本についての感想などを聞かせて下さいました。 高校生に向けてという事か、北杜…

ニケ先生の思い出-3

「ニケタンマね、ニケタンマ。」 板書を途中で止めて、チョークを持った手をこめかみにを置き、じっと何かを考えていた。 前の方で生徒達の笑い声が聞こえる。 「あ、面白い?これね、先生の故郷(くに)の言葉でね、ちょっと待ってっていうのを、ニケタンマ…