僕の通っていた高校の運動会は一大イベントだった。
その日も、朝から市の陸上競技場を借り切って盛大に行われていた。
その時、僕はスタンドの上の方に座って競技を見ていた。ふと後ろを振り返り、競技場の外に目をやると、アスファルトの外周を先生が歩いている。
手を後ろに組み、うつむき加減で一人歩いていた。教室で見るいつもの楽しげな先生と様子が違う。じっと何かを考えているようだった。
僕は、中で行われている競技よりも、寂しそうな先生の背中の方が気になっていた。
先生は、その少し前にお母様を亡くされていたのだった。
つづく