ニケ先生の思い出-3

「ニケタンマね、ニケタンマ。」

板書を途中で止めて、チョークを持った手をこめかみにを置き、じっと何かを考えていた。

前の方で生徒達の笑い声が聞こえる。

「あ、面白い?これね、先生の故郷(くに)の言葉でね、ちょっと待ってっていうのを、ニケタンマっていうんだよ。」

 

田中先生は、当時50代だったと思う。モジャモジャのくせ毛にズングリとした体型。

落語の家林家三平に似た風貌の、温かくて面白い先生だった。

先生の現代社会の授業は楽しかった。

「今日勉強するのはね、」

そう言って、カチカチと黒板にチョークを走らせる。

ー中東の原油が高騰すれば、日本の天ぷらそばが値上がりするのはなぜか。

と、毎回テーマを書くことから始まった。まるで、先生自身が授業を楽しんでいるようだ。

 

                               つづく