音のないピアノ (3)
手の動きからして、ゆっくりした曲のようだ。画面の右下に曲名と作曲者が表示されるが、見覚えがない。彼は演奏の後のインタビューで次のようなことを話していた。
「ピアノを弾いて聴いてくれる人がいる。そうすると自分の価値が認められたように感じて嬉しいんだ。」
そう言い残して立ち去る彼の背中はどこか寂しそうだった。
自分の心のある部分を見せられたような気がする。チクリと胸が痛い。
次の奏者を待つピアノ。一人の老人が静かに歩みよる。
肩に掛けていたカバンを下ろし、椅子に座る。
濃いグレーのジャケットに鮮やかなブルーのシャツ、それに合わせた水色のネクタイ。まずはその粋ないでたちに目を惹かれた。
鍵盤の上にはシワの刻まれた手、それが男の長い旅路を物語る。
やがて体を小さく揺らし始めた。歌っているようだ。表示された作曲者の名を見てハッとした。
ードン・モーエンー
多くの礼拝音楽を生み出し、今なお活躍する音楽家だ。
画面の下には字幕の歌詞が流れる。それは神を讃え恵みを感謝する歌だった。91歳とは思えない力強さ、にじみ出る深い喜び、それは音はなくとも確かに伝わってきた。
つづく
今週もYoutubeにピアノのBGMを投稿しています。
New video is on my youtube channel.
Please check it out! Thank you.
「prayer 0522 〜 Soaking Worship piano 〜」
photo
PAKUTASO
www.pakutaso.com